経営

飲食店の人件費を削減する方法【削減後にやることも解説】

新米店長

飲食店の人件費ってどうやって下げればいいの?

人件費を下げるメリット、デメリットは?

下げた後お店が円滑に営業できる方法も知りたい。。

こういった疑問にお答えします!

本記事の内容

・そもそも人件費とは?

・人件費を削減するメリット

・人件費を削減するデメリット

・人件費の削減方法

・人件費を削減してもお店が円滑に営業できる方法

プロフィール

筆者の飲食経験
・アルバイトで4年勤務
・社員として7年勤務(ほとんど店長)
・オープンから2年赤字だった店舗を赴任して2ヵ月で黒字化
・月売上1,200万円と800万円の2店舗を店長兼任
・現在の職場では史上最速3ヵ月で店長に昇進
・「アパレルメーカー→飲食→IT→飲食」と転職を3回経験

人件費ってお店を運営する上で最も大事なものの一つですよね。

僕は店長になったばかりのころ、とにかく人を入れまくった営業をしていました。

その結果人件費が高騰してしまい、売上は落ちていないのに赤字を計上してしまいました。。

そこから人件費に対する意識を高めていろいろなやり方を実践しました。

結果、継続して昨年比売上120%、昨年比人件費マイナス3%のお店を作ることができました。

実際に僕が実践して効果があるものを解説します。

この記事を読んだらぜひ実践してみてください。

それではスタート!

そもそも人件費とは?

人件費とは、労働に対して支払われる給与や各種手当等のことを指します。

正社員とアルバイト、パートで中身は異なります。

正社員の人件費

  • 基本給
  • 各種手当
  • 賞与(ボーナス)
  • 社会保険料
  • 福利厚生費
  • 交通費
  • 住宅手当
  • 家族手当
  • 退職金

アルバイト、パートの人件費

  • 時給
  • 時間外手当
  • 深夜手当
  • 交通費

やはり正社員の方が人件費は高くなります。

しかし一般的にはアルバイト、パートの方が人数が多いので、合計金額はこちらの方が高くなりやすいです。

僕は最初、給与やボーナスだけかと思ってました笑

いろいろなお金が人件費には含まれています。

人件費率の計算方法

人件費率とは、売上に対してどれくらいの人件費が使われているかを表すものです。

人件費率の計算方法

人件費率=(人件費÷売上)×100(%)

例えば1ヶ月の売り上げが1,000万円で、お店全員の人件費が250万円だった場合、

(250万円÷1,000万円)×100=25%が人件費率となります。

なぜ人件費率が大事なのか?

ただの人件費だと、売上に対してどれくらいの割合があるかわかりません。

「人件費250万円!」って言われても売り上げが500万円なのか1,000万円なのかで全然違いますよね。

売上に対しての割合が大事なので、必ず売上とセットで考えてください。

飲食店における人件費率の目安

一般的な飲食店における人件費の目安は、売上に対して30%と言われています。

たとえば売上が1,000万円だと300万円くらいが目安となります。

なぜ30%なのでしょう?

それを説明する前に、FLコスト、FL比率というものを紹介します。

FLコスト、FL比率とは?

FLコスト

「F」 →Food →食材費

「L」 →Labor →人件費

この「食材費」と「人件費」をあわせてFLコストといいます。

FLコストは飲食店のコストのなかで大部分を占めます。

しかも家賃などと違ってコントロールがしやすいため、適正な数値に近づければ安定した運営につながります。

FLコストの計算方法

FLコスト=食材費+人件費

食材費が100万円、人件費が100万円ならFLコストは200万円になりますね。

さらにFLコストを売上に対しての割合で表したものが、FL比率と言います。

FL比率の計算方法

FL比率=FLコスト(食材費+人件費)÷売上×100(%)

FLコストが200万円、売上が350万円なら、

200万円÷350万円×100=FL比率は57%になります。

FL比率が売上の60%を下回るように営業すると利益が出やすいと言われています。

65%を上回ると危険な状態(食材費と人件費をかけすぎ)です。

逆に55%以下だと優良な営業をしていて、利益も出やすいです。

食材費と人件費の割合は業態によって異なります。

業態F(食材費L(人件費)
焼肉40〜45%20〜25%
カフェ24~35%25~36%
寿司38~42%23~27%
ラーメン30~35%25~30%
居酒屋28~35%25~32%
ファストフード40〜45%20〜25%
レストラン31~35%27~29%
テイクアウト(弁当)38~42%18~22%

焼肉なんか肉を自分で焼くので調理の手間が省けて人件費は安くなりますね。

ファストフードも片付けを自分でしたり、基本カウンターで受け渡しなので手間が省けてますよね。

人件費安いところはその分食材費にお金使ってます。

逆に人件費が高いところは食材費を抑えることで利益を上げています。

要は、食材費と人件費のバランスが重要なわけです。

さきほどなぜ人件費の目安が30%なのか?と書きました。

食材費が30%前後のところが多いので、人件費30%とあわせて60%を上回らないようにするためですね。

人件費を削減するメリット

人件費を削減するメリットは主に2つです。

利益が増える

同じ売上でも人件費が減れば手元に残る利益が増えます。

たとえば売上500万円のお店で人件費率が30%(150万円)だと、500万円ー150万円=350万円残りますが、

人件費率が29%(145万円)だと、500万円ー145万円=355万円となります。

人件費率を1%下げるだけで5万円の利益が増えるわけですね。

これが一番大きなメリットです。

従業員のスキルが上がる

今まで4人で組んでいたシフトを3人にするとします。

ひとりひとりの仕事が増えるので、いやでもスピードアップ、効率の良い動き方を身につけます。

人件費を削減するデメリット

人件費を削減するデメリットは主に3つです。

従業員の負担と文句が増える

はたらく従業員を減らすと、当然ひとりひとりの負担が増えます。

さらに今まで入れていたシフトが削られるわけですから、文句のひとつも言いたくなります。

みんながスキルアップして慣れればいいですが、それについていけず辞めちゃう子もでてきます。

そうなるとさらにはたらく人が減るという悪循環に陥ります。

アルバイト

仕事が急にしんどくなった!

シフトにも入れなくなったし辞めてやる!

ってなるパターンは多いです。

店舗運営に支障が出る

急にはたらく従業員が減ると、お店が回らなくなります。

提供遅延、忙しすぎて接客が雑になる、料理のクオリティの低下、清掃が行き届かなくなる、etc...

今まで当たり前にできていたことが疎かになりがちです。

お客さんの満足度が下がる

従業員が減る→店舗運営に支障が出る→お客さんの満足度が下がる

といった流れです。

「いままではよかったのに、味のクオリティ落ちたよね。」

「料理全然こねえ。もう1時間待ってる。」

「従業員の顔が死んでいる。」

「トイレのゲロが長時間放置されている。。」

お客さんの満足度が落ちて、人件費は下がるけど売り上げも下がってしまうパターンです。

人件費の削減方法

では具体的な人件費の削減方法を紹介します。

基本シフトを見直す

無駄な人件費を削るやり方です。

今まで作っていたシフトを見直して、削減できる時間はないかチェックします。

日、曜日ごとの売上予測を立てて、業態ごとの人件費に収まるよう調整します。

例えば居酒屋なら適正人件費が25〜32%なので、30%以内ならOKとします。

日にち、曜日ごとの売上予測は、去年の売上や先月の売上を参考にしてみてください。

あくまで予測なのでざっくりで大丈夫です。

たとえば10/1の月曜日の売上予測を20万円とします。

20万円×0.3(30%)=6万円

この日は6万円以内に人件費を抑えればOKとわかりますね。

次に時間帯ごとの人件費も計算します。

営業時間内で、6万円を1時間ごとに振り分けるイメージです。

新米店長

この時間は1人減らしても大丈夫だな。

この時間は売上はないけど仕込みが必要だから減らすのはやめとこう。

みたいに分析してみてください。

感覚も大事ですが、数字を分析することで本当に必要な人件費が見えてきます。(上から詰められたときの言い訳にもなります笑)

参考として、人件費を適切に管理する指標を4つ紹介します。

平均時給

正社員、アルバイト、パート等すべての従業員の1時間あたりの平均時給です。

総人件費÷全員の労働時間の合計で求められます。

都市部と地方で差はありますが、1,200円以下が良いとされています。

人事売上高

1人の従業員が1時間にいくら売上を上げることができたかを表す指標です。

月ごとなら、月間売上高÷月間総労働時間で求められます。

日ごとなら、1日の売上高÷1日の総労働時間です。

たとえば月間売上高が500万円、月間総労働時間が1,000時間の場合、人時売上高は5,000円となります。

つまり1人あたり1時間5,000円の売上を上げていることになります。

人時売上高の平均値は3,000円〜4,000円と言われています。

5,000円を超えると優良店とされています。

労働分配率

労働分配率は、粗利高に占める人件費の割合です。

人件費÷粗利高×100(%)で求められます。

40%以下が目安とされています。

粗利とは

売上から売上原価(食材費)を引いたものです。

粗利=売上ー売上原価(食材費)

労働生産性

労働生産性は、従業員1人当たりの生産性を表す指標です。

粗利÷換算人員(フルタイムで働いた場合の従業員数)で求められます。

4時間働いたスタッフが4人と8時間働いたスタッフが2人いた場合、総労働時間は32時間となり、1日8時間勤務を基準とするのであれば、4人となります。

50万円〜60万円が基準と言われています。

早上げ、遅入りを行う

早上げとは、従業員を早めに退勤させることです。

遅入りとは、従業員に遅めに出勤してもらうことです。

予想に反してめちゃめちゃ暇な日ってありますよね?

やることが見つからなかったり人件費が高騰している時は、早めに帰しちゃう&遅めに来てもらいましょう。

個人的には遅入より早上げの方がよく使います。

遅入だと学校から直接来る人などは無駄な待ち時間になるケースがあるからです。

早めに帰るのはほとんどの従業員が嬉しがります笑

場合によっては休みにするのも手です。

注意点

早上げ、遅入り、休みにする場合は必ず従業員の許可を取ってください。

「今日暇だから帰って!」っていうと不満に思う人が出てきます。

「今日特にやることないから早上げしてもいいよ?どうする?」

みたいな感じで従業員に委ねる聞き方がベターです。

アルバイト

いま金欠なんで。。

働かせてください。。

って人も中にはいます。

その場合は清掃などなにかしらの仕事を与えてあげてください。

休憩を多めに取る

 労働基準法第34条で、

労働時間が 6時間を超え、8時間以下の場合は少なくとも45分 。

8時間を超える場合は、少なくとも1時間の休憩を与えなければならない

と決まっています。

その最低限の休憩はもちろんですが、暇な時はそれ以上の休憩もあげることで人件費が削減されます。

僕はよく15分の休憩を与えます。

たばこを吸う人はちょうどいい時間だし、15分などっと混んでも耐えられるからです。

中には休憩いらない人もいるので、

「休憩行ってきてもいいよ?」って感じで聞くのがベターです。

売上を上げる

売上が上がれば相対的に人件費は下がります。

しかし上記のデメリットに書いた通りお客さんの満足度が下がる可能性があるので注意が必要です。

売上が上がった場合は適正な人件費を計算し直してください。

新米店長

もともと削るところがないくらいカツカツの人数で営業してるよ。

これ以上人件費下げれないよ。

って人は売上を上げる方にフォーカスしてみてください。

正社員が固定残業代分シフトに入る

正社員の場合、固定残業代が設定されている場合があります。

固定残業代とは、実際の残業時間に関わらず、一定時間分の時間外労働、休日労働、深夜労働に対して毎月定額の残業代を支払う制度です。

たとえば固定残業代が30時間と決まっている場合、あらかじめ30時間分の時間外手当が支払われているため、30時間までは時間外手当が出ません。

30時間を超えるとその分残業代がもらえます。

つまり今月の残業時間が25時間の場合、残り5時間はアルバイトではなく自分がはたらくのです。

そうすれば5時間分の人件費を浮かすことができます。

ただ自分が辛くなるので、あまりオススメはしません。。

人件費を削減してもお店が円滑に営業できる方法

大きく分けて2つあります。

スタッフのスキルアップ

1つ目はスタッフのスキルアップです。

ひとりひとりのスキルをアップさせて、人件費を削減してもお店が円滑に回るようにします。

具体的な方法かつ実際に僕がやっていることを紹介します。

いろんなポジションを経験させる

だいたいの飲食店はホールとキッチンに別れていると思います。

さらにドリンクを作るポジション、魚を捌くポジション、揚げ物担当など細分化されます。

長年勤務しているのに、ひとつだけのポジションしかできない人が意外といます。

教えるのが手間だったり本人がやりたがらないケースが多いですが、説得して時間を使ってでもでもいろんなポジションを経験させてみてください。

いろんなポジションを経験させるメリットは3つあります。

シフトが組みやすくなる

ポジションごとにシフトを考える手間も省けるので、ぐっとシフトが組みやすくなります。

忙しい時にパッと手伝える

新米店長

今ホールは暇だけどキッチンめちゃ忙しい!

誰か盛り付け手伝って!

って時にパッと手伝える子がいると、だいぶ業務がスムーズにいきます。

適正なポジションが見つかる

新米店長

この子無愛想だし声も小さいな。

採用したのミスったかも。。

って人をキッチンにいれたらめちゃ動ける子だった!ってパターンです。

逆に手際が悪くてキッチン不向きだったけど、ホールなら向いてる!って人もいます。

効率の良い動きを教える

効率化を図るためにやることを紹介します。

優先順位を共有する

新米店長

ホールなら新規、提供、バッシングの順に大事だよ!

キッチンはまず枝豆とかおつまみ系を先に出そう!

ドリンクは料理よりも優先しよう!

上記のように優先順位を共有することで、まず何をするべきか?がわかるようになります。

1way2jobを意識させる

1way2jobとは、1つの動きで2つ以上のことをこなすことです。

たとえば、「料理の提供」という1wayがあると、

料理をもっていく→ドリンクのおかわりを聞く→運んだ席の空皿を下げる→近くの席の空皿も下げる

みたいな感じです。

3job、4jobとできてくると少人数でもお店を回しやすくなります。

あえて手伝わない

忙しくなるとどうしても手伝いたくなりますが、そこをぐっこらえて効率のいい動きをアドバイスします。

料理がたくさん入ったキッチンをイメージしてみてください。

新米店長

この場合まずは枝豆を出そう。その次にからあげをフライヤーに入れて、その間に魚を盛り付けよう!

みたいな感じでアドバイスすると、自然と効率の良い動きができるようになります。

ポイントは手伝わないことです。

自分でさせることによって初めて身につきます。

やらなくいていいこと共有する

やるべきことはある程度みんなわかっていると思います。

しかしやらないことを決めて共有することが大事です。

仕事は探せば無限にあるので、「これはやらなくていい!」って決めとくとスムーズに仕事が進みます。

定期的な面談とテストをする

1対1の面談をしてください(1ヶ月に1回が目安)。

面談内容は、

  • 人間関係に問題はないか?
  • わからない、不安な業務はないか?
  • 変えた方がいい業務、マニュアルはないか?

とかでいいと思います。

集団ミーティングでもいいですが、1対1の方が本音でしゃべってくれます。

長い面談をたまにやるより、短い面談でもこまめにやる方が効果は高いです。

面談をすることによって個人個人の課題が見えてきます。

ついでに人間関係の問題もクリアにできれば、コミュニケーションの疎通もスムーズにできて業務が捗ります。

マニュアルのテストも定期的にしてみてください。

文書で作ってもいいですが、営業中に口頭で確認するだけでも大丈夫です。

「これは何グラム?これを作る順序は?」

みたいな感じで聞いてみてください。

効率的に動くアドバイスもできますし、マニュアルをきちんと覚えることにもつながります。

業務の効率化

2つ目は業務の効率化です。

物の配置や動線の効率化

食材や備品の置き場所を今一度見直してみてください。

よく使うのに遠いところや取りにくいところに置いていませんか?

配置を変えるだけでぐっと効率的になることがあります。

また動線(人が移動する経路)にも無駄がないか見てみてください。

効率的な移動になればなるほど、人件費削減につながります。

省人化する

省人化とは無駄な工程、作業を削減し、人員を減少させることです。

たとえば、

  • セルフレジなど、今まで人がやっていたものを機械におきかえる。
  • セルフサービスの導入
  • オンラインオーダーの導入

などが挙げられます。

機械化、自動化できるものは最初はコストがかかりますが、長い目で見ると人件費削減に大きくつながります。

マニュアル化(人によってやり方が違うものを統一する)

特にやり方が統一されていない作業があると思います。

洗い物ひとつとっても、スピーディーに綺麗に洗える人、できていない人がいると思います。

人によってバラツキが出るものは、なるべく効率の良いマニュアルを作って浸透させましょう。

4Sに努める

4Sとは、「整理、整頓、清掃、清潔」という4つの言葉を指します。

今回は特に整理、整頓がきちんとできているか今一度振り返ってみてください。

整理、整頓ができていないと、物の場所がどこにあるかわからなかったり、作業スペースがごちゃごちゃして業務の効率が下がります。

まとめ

いかかでしたでしょうか?

人件費はお店の利益に直結するので、はたらきながらも常に意識しておいてほしいです。

ちょっとした積み重ねで大きく変わってきます。

ただ人件費を下げる=良いこと!ではないです。

上記に記載した通りデメリットもあります。

お店の適正人件費から大きくマイナスな場合は、売上を取りこぼしていることもあります。

目安としては、適正人件費マイナス1〜3%を目指してみてください。

もちろん業務の効率化やスタッフのスキルアップでそれ以上下げれるなら全然OKです。

この記事を読んだらさっそく実践してみてください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

-経営
-